Ruth Welting(ルース ウェルティング)は1948年米国生まれのソプラノ
1993年で舞台を引退、1999年に死去と短命だった歌手であるが、引退した役が夜の女王と、
デビューから引退までレパートリーは変わらなかった。
歌唱には古さを感じる部分もあるが、その古さというのが何かと言えば、
言葉<超絶技巧に重点が置かれ、誤解を恐れず言うならば、声というより音を出しているように聞こえるところ。
そして、中低音をアペルトに出すこと。
この特徴は最近までコロラトゥーラを生業とするソプラノの大きな特徴だったように思う。
立て続けに何人か紹介するので、聴き比べてほしい。
まずルース ウェルティング
レリ グリスト
おばあちゃんになっても可愛らしい声です。
宮廷歌手のリタ シュトライヒ
これらの歌手は、基本的に奥を開けるというより、大事なのは前の響きです。
今なら浅い声と言われるでしょうが、彼女達は絶対響きが落ちないし、
喋っている声でも分かる通り、無茶苦茶小さい楽器です。
※世界一喋り声が高いと言われる日本人女性には合致する発声です。
これは勝手な想像ですが、
日本人の大抵の軽いソプラノは、こういう歌い方を一つの理想形として今まで教育されてきたのではないでしょうか?
ただ、この歌い方はやはり軽い役しか歌えない歌い方です。
彼女達は年齢を重ねてもレパートリーの変化がありません。
これがどういうことかと言うと、加齢と共に変わる身体の変化に対応できない歌い方なのです。
あるいは、年齢を重ねても声が重くならない特殊な楽器を持っていたか・・・。
それでも、短命ながら驚くべき技巧や、驚異的な高音には魅力もあります。
ルース ウェルティングのハイライト映像
”a”母音や”e”母音が時々アマチュア歌手みたいな響きになってますが、
それでも彼女の歌には不思議と魅力があります。
例えば最近の同じような系統のソプラノ
エレナ モシュク
上記の歌手達よりよっぽど声に深さもあるし、響きも母音ごとにバラツキがある訳でもありませんが、
どこか面白みがない。
中低音なんて慎重に声を出し過ぎていてあまり聴こえないし、やっぱりもう少し前で響いて欲しい気がする。
ではモシュクに足りないのは何か?
恐らく、胸の振動(胸声的な要素)だと推測されます。
実際、シュトライヒ、グリスト、ウェルティングは低音域がちゃんと鳴ってるんですよね。
響きというのは高ければ良い訳ではなく、胸から繋がって顔まで振動していなければ、
地に足が着いていないような、上半身だけの響きになってしまいます。
その典型が森 麻季
顔の響きだけで歌うとこうなってしまう。
軽い声でも下半身から上半身まで繋がった声である必要性が、
このように比較するとよくわかるのではなかろうか?
CD
アルフレード・クラウスとのホフマン物語なんて映像は中々貴重ですね。
[…] この人は、昨日書いた記事で、ひと昔前のコロラトゥーラを得意とするソプラノの発声について触れたが ベルガンサは、楽器が大きくなった状態で同じ歌い方をするとこうなる。 という結論だ。 この人、映像を見れば分かる通り、常に口の開け方が横でアペルトなんです。 でも、長さがあって非常に柔軟で薄い声帯なのでしょう。 低い音までその音色のまま鳴ってしまう。 持ってる楽器は言うまでもなく一級品です。 […]
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